【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち


「桐生さんも墨入ってましたよね?」


正直なところ誰が入っていて誰が入っていないか覚えていない。


夏場はよく目にするが冬場はほとんど見ることがない。


はじめて近くで見た時には怖かったけれど最初から見て育った菫には普通のものなんだと思う。



「あっしも背中に般若が入っておりやす」


サラッと言うが般若とは怖すぎる。


いや、何の柄でも怖いのは同じだけれど般若を背負って生きる桐生さんは何を思って入れたのだろうか。



「今まで菫に聞かれたことある?」


「一度もねぇです。組員たちの墨を見ても触れる事はあっても口に出して何か言う事はなかったでごぜぇやす」



「長い間の不思議だったんでしょうね。きっとみんなと同じにしたいっていうかお揃いっていうか、その程度の事なんだと思います」



「そうでごぜぇやしょうね。墨入れてるあっしが何を叱ってんだって自分でも思いながらでしたよ」



私は、植木さんに墨が入っている事は知っている。


だけどそれは何が描かれているのかは知らない。


入っていると植木さんに聞いただけで見た事が全くないからだ。



鬼の植木と呼ばれている事は十分わかっているけれど


私にとってどうしたってこの優しくて話すことで人を気分よくさせてくれる植木さんが恐ろしい刺青を彫っているとは結びつかない。




「響さんと隼は菫の前で肌を見せまくると思います」


確実とも思えるその行動を想像して思わず吹き出す。


「しかし菫ちゃんは立派なもんでごぜえやした」


泣くのを我慢した菫を誉めてくれた植木さん。


「あっしはもう可哀相で可哀相で」


子煩悩のように菫を大切に思ってくれる桐生さん。


「あっしだって叱りながらも可哀相で堪らねぇ。嫌われたらどうしようかとビクビクだ」


あはははは






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