ご主人さまの冷酷彼氏

*



キーンコーンカーンコーン。


平和ボケしたチャイム音が鳴って、まもなく授業が始まった。



授業開始してからも、おれはタカシの観察を続けた。



続けたものの……だ。



おれの中で、タカシの印象は、ますます悪くなるばかり。




……まず基本、タカシには表情ってもんがねえ。



クラスメートに話しかけられても、まったく愛想笑いしねーし。


誰かが渾身のギャグをかまそうが、すってーん!って漫画みたいに転ぼうが、クスリとも笑わねえんだよ。

鉄仮面かお前は。



……あ。授業中、先生に突然当てられたときも、顔色一つ変えねーでさ。



ちょっと焦ったりトチったりすればかわいいものを……


すずしい顔でそつなく問題解いちまうあたり、なんかもう、すっげー気に食わねえ。



……あと、気がついたら、いちいち女子に囲まれてやがるんだよな。



朝と同じ。ひっきりなしに、女子から質問されてさぁ。


「あー」だの「べつに」だの、めんどくさそうに答えてやがる。



……チッ。


短い舌打ちをして、おれは心中で毒づいた。


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