夏色かき氷【短編集】
夜空の花


夏のイベント。花火大会。

今年も私は、学校の女友達数人と花火大会に来ていた。毎年毎年楽しみにしていたイベントのうちのひとつなのに、今年はもの寂しい感じがする。皆もそれを感じているはずなのに、明るくふるまって口には出さなかった。

高校生最後の夏休みも、もうすぐ半分終わってしまう。そしたらもう、すぐに受験生本番。

本来、ここにも来ている場合じゃないのかもしれないけど、普段は勉強がんばってるんだし!と、息抜きにやってきた。

私達は、河原の階段に固まって座り、人混みで溢れる会場の中、夏の匂いを感じた。

あと何回、私達はこういう時間を過ごせるのだろう。

どんどん、花火が打ち上げられ、そのたびに、周囲の観客が歓声を上げていた。


私もたしかに、皆と同じ気持ちだ。まだまだ高校生でいたいし、皆と離れたくなかった。だから、卒業が近づいているのはとても寂しい。ただ、皆と少し違う寂しさがあるのも本当で……。

誰にも話していない、秘密の恋。私には、好きな女の子がいる。隣で一緒に花火を見ている“彼女”が、その相手だ。

“彼女”と私は、進路が違う。彼女は運動部で活躍していることから、有名な国立大学の先生に「ウチの大学に入らないか?」と、声をかけられているらしい。一方私は、何の才能もなくて平凡な女子高生。周りに合わせる感じでなんとなく四大受験を決めた。

一生懸命部活を頑張ってる彼女と何となくで毎日を過ごしてきた私では、雲泥の差がある。だからこそ、私は彼女を好きになってしまったのかもしれない。

誰よりも純粋で、誰よりも頑張っている彼女。世界でもっとも尊敬できる相手。そして、私の大好きな人……。


人の恋も、花火みたいに何度も繰り返したらいいのに。そしたら、私は何度も彼女を好きになるに違いないのに。


叶わない想いだと、分かってる。この感情を彼女に知られたら嫌われてしまうかもしれないってことも。それでも、私は、彼女を想う。

綺麗なのは夏の青空だけかと思ってたけど、彼女と見る夜の花火も、負けないくらいキラキラしていた。綺麗すぎて、胸が痛くなるくらいに。

何も望まない。彼女といられるのなら。だから、お願いします。まだ、終わらないで、花火――。


熱い想いに、めまいがする。

花火の匂いに、クラクラしてしまう。
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