雨恋~芸能人の君に恋して~



「そっか。よかった」



そう言って、またふわりと笑う優紀君とは反対に、私の顔は強張って、どんどん険しくなる。



どうして、そんなきれいな顔で笑いかけるの?



どうして、そんな優しい声で話しかけるの?



昔のあなたは冷たくて、



人を寄せ付けない人だったのに。



「また共演できて、嬉しいよ」



無言のままの私に、そう声をかける優紀君。



「さっきの演技、すごくよかった。やっぱり相澤さんは凄いな」



演技なんてしてなかったのに、



頑張って演じても、どうせろくに映ってなんかないのに。



「ステージの上から、相澤さんの目に吸い込まれて、演じるのを忘れそうなくらい見とれちゃった」



私なんかより経歴も、演技力も全然上で、



瞳の中にはお星さまがあるんじゃないかって思うほど、キラキラしてて、



ドラマにCMに雑誌に大忙しで。



「前から思ってたけど。俺、相澤さんの演技好きだよ」



優紀君は、昔なら絶対に見せなかった無邪気な笑顔で、そう言った。




< 8 / 94 >

この作品をシェア

pagetop