雨恋~芸能人の君に恋して~
「そっか。よかった」
そう言って、またふわりと笑う優紀君とは反対に、私の顔は強張って、どんどん険しくなる。
どうして、そんなきれいな顔で笑いかけるの?
どうして、そんな優しい声で話しかけるの?
昔のあなたは冷たくて、
人を寄せ付けない人だったのに。
「また共演できて、嬉しいよ」
無言のままの私に、そう声をかける優紀君。
「さっきの演技、すごくよかった。やっぱり相澤さんは凄いな」
演技なんてしてなかったのに、
頑張って演じても、どうせろくに映ってなんかないのに。
「ステージの上から、相澤さんの目に吸い込まれて、演じるのを忘れそうなくらい見とれちゃった」
私なんかより経歴も、演技力も全然上で、
瞳の中にはお星さまがあるんじゃないかって思うほど、キラキラしてて、
ドラマにCMに雑誌に大忙しで。
「前から思ってたけど。俺、相澤さんの演技好きだよ」
優紀君は、昔なら絶対に見せなかった無邪気な笑顔で、そう言った。