雨恋~芸能人の君に恋して~
あの時の私は幼くて、何もできなかったけど、
今はもう、戸惑うだけの子供じゃない。
後悔する前に、優紀君に会わなきゃ。
電話越しじゃなく、ちゃんと会って伝えなきゃ。
その日、最後の撮影を終えたとき、スタジオのドアが開いた。
そこに立っていたのは開で。開はまっすぐに私のところにやって来た。
「行くぞ!」
私の手を掴む開。
林田さんが慌てて、開を止める。
「あなた、何してるか分かってるの?」
いつになく厳しい口調の林田さんに動じることなく、開は燃えるような目で私を見つめる。
「今、優紀は空港にいる。今なら間に合う。優紀に会いに行くぞ」
スタジオ中に響く声に、開が入って来たときは、噂の2人だと、私と開のやり取りを見て見ぬふりしていたキャストやスタッフも、
突然、開の口から出た優紀君の名前に、不思議そうに私たちを見た。
林田さんも、開の言葉は予想外だったみたいで、ポカンと口を開けている。
「行く」
私の言葉に、握った開の手に力がこもる。
「私を優紀君のところに連れてって!」
開と共に、スタジオを飛び出すと、スタジオの駐車場に停めていた開の車に乗った。