瞳 短編小説
ジリリリリリ
ガチャン。
「おはよう」
「おはよう」
「昨日さぁ上司にかなり酒飲まされてさ、まあ、断りきれなかった僕が悪いんだけどね遅くなってごめんね」
「いいよ。夕食ちゃんと食べた?」
「うん!美味しかったよ」
「よかった、頑張って作ったんだ。今日も仕事頑張ってね」
「ありがとう」
…あれ、仕事って何してるのだろう。
彼の名前はなに。
彼は…誰。

ジリリリリリ
目が覚めた。
夢だったんだ。少し落ち込んだ。
ガシャン。
彼は大きな背伸びをしながら起き上がった。
「よし、今日も一日頑張る!」
また独り言を言った。彼の方を見たらなぜか彼は私の方を見ていた。
そしてにっこり微笑んで
「おはよう。」そういった。
それから毎日「おはよう」「行ってきます」「ただいま」「おやすみ」と彼は動かない私に何度も話しかけた。
もちろん私は彼ににっこり微笑んで「おはよう!」なんて言えない。
だって私は動けないもの。
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