Believe
1.真夜中の訪問者
⑴出会い
1970年代。
世の中は不況の真っただ中。
路上には失業者が溢れ、お世辞にも治安の良い街とは呼べない。
みんな生きるのに必死で、スリや万引きの犯罪は多く、窃盗や殺人まで犯す人もいた。
道には家を失って行き場をなくした人。
物乞いをする子供までいた。
「ねぇねぇ、お姉さんいい服着てるね。少しでいいからお金ちょーだい。」
私はスカートを引っ張られ、足元に立っていた子供を見た。
まだ4、5歳位かしら…。
男の子か女の子かさえ分からない格好をして、顔は泥で汚れていた。
うずくまってその子と視線を合わせると、風にのって不衛生な匂いがした。
きっと何日もシャワーを浴びていないに違いない。