才川夫妻の恋愛事情
Yシャツ越しに伝わる体温と少しかかる体重に胸が苦しくなって。手のひらがそろりと私の頬を撫でて、吐息を近くに感じると息を止めてしまいそうだった。緊張のあまり、微動だにしない今の自分が怪しい気がしてきて、なるべく自然に寝返りを打つ。掛布団を抱きしめるようにしてあくまで自然に。
――どこに唇が落ちるだろう?
寝返りを打って横向きになった私の、耳にかかる髪がそっと指で流されたかと思うと耳元に吐息が近付く。ゾクりと背筋が震えてそれだけで声が出てしまいそうになるのを我慢した。
何をされてしまうのか。はたまた囁かれるのか。抱きしめている掛布団をぎゅっと握って堪える準備。
――ぴちゃ、と彼が唇を開く音がした直後。
「……寝たフリすんな」
「うひゃあぁっ!?」
息をたっぷり含んだ指摘にのけぞった。……思ってたのと違う!
直前に緊張しすぎたせいかもしれない。構えていたくせに心臓がドクドクと鳴って体が驚いていた。なんならちょっと涙が出てきた。囁かれた左耳を押さえながら抗議する。
「っ……なんかもっと他にあるでしょう!」
「他って?」
「あ……愛してるよ的な……」
「……」
あっ、すごい呆れた目で見られてる……。つらい……。
ごめん忘れて、と両手で視線を制すると、才川くんは「プレッシャー……」とよくわからないことをつぶやいて私の上から降りた。