才川夫妻の恋愛事情
「自信があるクセに、なんで今日は〝わからない〟ってごねてるんだ」
「……自信はあるけど不満なんです」
「不満?」
「わかりたいのにわからなくて。私、特に最近ですけど、才川くんの言うこととかすることで意味わかんなくなって、ぐるぐる考えて。信じられないくらいエネルギー使うの。結婚してもう六年も経つのに」
「……なんで?」
……なんで??
そう訊く彼の意地悪な顔に、いつか言わされた言葉を思い出す。気付いたときには遅かった。
「言わせないでください」
「なんで」
間近に迫ってきていた才川くんは、もう絶対に言わせるつもりの顔をしていた。
観念して小さな声でつぶやく。
「……好きだから以外ありますか?」
「ないな」
才川くんは満足そうに笑うと、私のベッドから立ち上がってサイドテーブルの別の引き出しを開ける。中から小さな箱を取り出して、銀色の正方形の袋を一枚つまみだした。
私はぽかんとしてしまって一瞬反応が遅れた。
「……え、するの?」
「駄目?」
「や、でもついこの間したとこだし……今から?」
朝目覚めたら抱かれていたことはまだ記憶に新しい。後日一度だけダメ元で誘ってみたけれど〝ゴムを切らしてるから〟と断られてそれっきりだった。彼が二ヵ月も経たず、こんなに短いスパンで身体を求めてくることは珍しい。……というか、結婚以来ない。
こんなの戸惑う。