才川夫妻の恋愛事情
「産休に入ったらさすがに補佐できませんし」
「……それいつの話?」
「すぐですよ」
「妊娠しました」
驚いてくれるかな、と思って隣の彼を見ると姿がなくて一瞬焦った。そのまま視線を下ろすと、才川くんはその場にしゃがみこんでいた。
え、そこまで!? と逆に驚きながら、私もその場にしゃがみこむ。蚊の鳴くような声がする。
「…………そういう、大事なことは……。っていうか、早いな……?」
「夫婦は似るって言いますから、旦那さんが秘密主義だとねぇ……。私も、早いなと思いました」
どっちの執念でしょうね、と言ったら、そこははっきり「俺のだよ」と言う。
最近まで欲しがらなかったくせにと思いながら、嬉しそうな彼の顔に笑ってしまった。
恋をしています。
いずれ衰えて傍目には格好良くなくなってしまっても、私には素敵に見えます。
なぜなら、嬉しそうに笑う彼は「幸せになろう」と言った。
彼が口にすることは、私が「喜んで」と言いたくなることばかりだからです。
≪後日談・才川夫妻の蜜月≫ End