才川夫妻の恋愛事情
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「……ん?」
帰宅して部屋着に着替えようとしていたらみつきが後ろから抱き着いてきた。まぁまぁ珍しいことだったから、甘えてるのか?と。“かわいい奴め”と内心思いつつ「邪魔」と冷たくあしらおうとしたら、不意に脇腹をつままれた。
「え、なに……?」
「……最近ちょっとお肉ついてきました?」
「は?」
たしかに仕事柄ビールを飲むことは多いけど、運動もしている。心外だと思って後ろを振り返ると、みつきは背中に抱き着いたままこっちを見上げてニコーッと笑っていた。
「幸せ太りですね!」
「泣かすぞ」
このあとしっかり運動に付き合ってもらった。
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残業が続いてるわけでもないけれど、どうにも眠かった。今日は早く休もうとベッドに入って、肩まで布団を被ったとき。
足元からモコモコと掛け布団が盛り上がる。いつの間に後ろをついてきていたのか。
下からもぞもぞと潜りこんできた生き物は、若干の重みと柔らかさで俺の脚から腹の上を通過し頭の方を目がけて上ってくる。……ほふく前進? 布団に引っかかって上手く前に進めないのか、なかなか姿を現さない。
まだか……とつい、待ち始めてしまった頃に、ぷはっ!と息をしてみつきが顔を出す。胸の上に乗ってきた彼女と至近距離で対峙した。
「……何してんの?」
「夜這いです!」
そうですか。
元気よく答えたみつきの髪は、布団に潜ったせいでぐちゃぐちゃに乱れていた。
「へぇ……」
夜這いねぇ、と気の無い返事をすると、みつきは気まずそうに口を変な形に結ぶ。
ほんとは恥ずかしいくせにおどけて見せたりなんかして。何をされてもだいたい応じないつもりだけど、あの手この手で誘ってくる彼女が面白くてずっと見ていたくなる。
「……しない?」
いっぱいいっぱいの顔でそう尋ねてきたみつきの、乱れてしまった髪を撫でつける。すると彼女は、期待したようにドキドキとした面持ちで大人しくそうされている。だから俺は言うのだ。髪を撫でながら苦笑して。
「また今度」
残念そうな顔がたまらないと思った。
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