才川夫妻の恋愛事情



竹島さんの顔を覗きこむと〝あ、いや〟と動揺した顔を見せた。どうやら失言だったらしい。絶対に逃がさない!



「なんです? 噂って」

「いや、新入社員にするような話じゃ……」

「なんなんですか? 教えてくれるまで離しません!」



手にがっちりと竹島さんのスーツの裾を掴んだ。このままいれば二人揃って遅刻だ。



「あのなぁ……!」



竹島さんは絶対に手を離しそうにない私の目に観念したのか息をついて、声を抑えて言った。



「深夜残業の夜に、会議室でやってるんだと。あの二人が」

「二人が? 何をですか?」

「だから、ナニを」

「……最低ですね竹島さん」

「だぁから言いたくなかったの! 言わせたのお前だろ!」

「セクハラ委員会の委員長って松原さんでしたっけ?」

「野波さんごめんそれだけは!」



そんな応酬を繰り広げている間に始業のチャイムが鳴る。竹島さんがそれに合わせて〝あ! 俺まだ一本も吸ってねぇ!〟と嘆くので、すみません、と謝っておいた。喫煙所前からは撤退。

自分のデスクへ小走りで戻りながら考える。


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