溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
 


 両親は出かけていたので、彰人が家の掃除を手伝ってくれた。

 別に散らかってもいなかったのだが、何故か自分より彰人の方が張り切り、母がかけたはずの掃除機をまたかけ直していた。

 居間の大きな飾り棚の上まで掃除しようとするので、
「大掃除じゃないんだけど」
と苦笑しながらも、ちょっと嬉しかった。

 チャイムが鳴って、昌磨が現れる。

 さすがにドアを開ける権利は譲ってくれた。

「おはようございま……わあ」

 昌磨は真っ赤な薔薇の花束を持っていた。

「これをお兄さんと」

 お兄さんと!?

「花音に」
と何故か、ケーキの箱の方を花音にくれる。

「お兄ちゃんが花束で、私がケーキですか!?」

「ち、違う。
 二人に両方だ。

 今、たまたま渡したタイミングがそうだっただけだ」

 いや、兄の方が真っ赤な薔薇の花束が似合うのは事実だが……。

 最近出来たばかりで、美味しいと評判の店のケーキの箱を上から見た彰人は、
「ほう。
 やはり、なかなか物のわかる男だな」
と呟く。

「お兄ちゃん、何度も言うようだけど、昌磨さんの方が年上……」

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