早く俺を、好きになれ。


そんな叶ちゃんの姿が自分と重なって、胸が張り裂けそうだった。


なんの努力もしてないのは私も同じだ。



「あたし……男子とどんな風に話せばいいのかわからなくて。普段から騒ぐ方じゃないし、少人数でいる方が好きだし。クールで無愛想だから、誰も声をかけてくれないし」



普段の冷静さはどこへやら、叶ちゃんはオロオロし始めた。



「1年の時……クラスの女子と揉めたの。体育の授業で、気分が乗らなくて仮病を使ったことがあって。その日の見学者があたしだけだったのね」



叶ちゃんは苦しそうにポツポツ話し出した。


一生懸命伝えようとしてくれてるのが伝わって来て、私も精いっぱい耳を傾ける。



体育が終わってからみんなよりも早く教室に戻った叶ちゃんは、本当に具合が悪くなって机に突っ伏して寝ていたんだそうだ。


みんなが戻って来てしばらくした頃。


『あたしのサイフがないっ!!』


クラスの女子が叫んだ一言に教室中がざわついた。


その子が最後にサイフを見たのは、体育が始まるほんの直前。


< 143 / 307 >

この作品をシェア

pagetop