早く俺を、好きになれ。
「バカは咲彩だろ」
まだ言うか?と思ったけど、くだらない言い合いに今は助けられてる。
こうしていると、少しでも武富君のことを考えなくて済むから。
……ありがとう、虎ちゃん。
ぼんやりしながら歩いていたら、隣にいたはずの虎ちゃんの姿がいつの間にかなくなっていた。
後ろを見ると、何やら虎ちゃんは斎藤と話し込んでいる様子。
ふーんだ、先に行ってやるもんね。
そう思って歩くペースを速める。
歩道がない道路脇に差し掛かった時、急に虎ちゃんに腕を引っ張られた。
「ちょ、な、なに?」
「お前、歩くの速すぎ。後ろからトラック来てんだろ?ひかれたらどうすんだ、バカ」
ムッ。
「またバカって言った」
チラッと虎ちゃんの顔を見上げると、真剣な瞳と視線が重なる。
どうやら、本気で心配してくれていたらしい。
その瞬間、大型のトラックがブォーッと大きな音を立てながら横を通り過ぎて行く。
「これだから、咲彩は目が離せないんだよなぁ」
「ごめんね……ありがと」
「ちゃんと隣にいろよ……何かあった時、守れないだろ?」
なんて言いながら虎ちゃんは私の腕を引っ張り、内側に押しやる。
歩道側を歩いてくれる男らしい虎ちゃん。
虎ちゃんに女の子扱いされるのは慣れていないから、なんだか少し照れくさい。
「あんま見んなよ、恥ずいだろ」
「ご、ごめん」
ちょっと照れたような虎ちゃんの横顔を見て、なんだか私まで恥ずかしくなった。
虎ちゃんって……こんな顔もするんだね。
今まで気づかなかったな。