主任は私を逃がさない
花岡さんは酔いも手伝ってか、立て板に水のような勢いで話しかけてきた。
「この後二次会に行くんだけどさ、良かったら中山さんも来ない? 俺さ、実はキミと話してみたいってずっと思ってたんだよ」
「え?」
今の言葉に微妙なニュアンスが込められているような気がして、私は花岡さんを見上げた。
彼は照れたように頭を掻きながら、ペラペラと饒舌にしゃべり続けている。
「いやほら、俺たち仕事仲間だしさ。この機会にもっと仲良くなりたいなってさ」
「あ、うん。仕事仲間だしね」
「そうそうそう! 同僚と親睦を深めるのも社会人として大切だよ。アルコールも大人の席のお付き合いとして必要だし」
……大人のお付き合い。
妙にテンションの高い花岡さんのセリフに、私の心は大きく反応してしまった。
言われてみれば確かにその通り。お付き合いにアルコールは付き物だ。
お酒をたしなむこともできずに、どこが大人の女性と言えようか。
世の中の多種多様なアルコール類において、ビールは登竜門と言えるだろう。
なのにこんなポピュラーな飲み物程度で臆しているようでは、いかにもお子ちゃまと思われてもしかたない。