優しくて温かい場所(Gently warm place)

∴∴誕生


優也も拓也も、顔のパーツは
咲桜が入っているが、
瞳は、誰も受け継いで
いなかった。

咲桜は、だんだんと大きくなる
お腹を愛おしそうにして
智は、毎日お腹に
語りかけて過ごした。

あんなに、咲桜に甘甘だった智だから
その過保護プリは半端なく
咲桜は、いささか辟易していた。

綾華は、その愚痴を聞かされて
苦笑いをするだけだった。
咲桜の兄である、和真は、
やはり、複雑な表情をしていたが
自分達にも、子供が出来て
ニヤケが、止まらなくなっていた。

臨月になり
智は、毎朝必ず
「咲桜、変わったことが
あったら直ぐに電話するんだよ。
いいね、わかった。」
と、言って学校に行く日々だった。

私は、その日
バタバタと家事をしていたが
お腹が、張ったり、止まったりを
繰り返し、
綾華に連絡して病院に
連れて行ってもらった。

もちろん、智には連絡したから
病院にまもなく来るだろう。

私が、分別室に入ると
直ぐに、智も入ってきた。

額から汗を噴き出しながら
私は、可笑しくて笑っていたが
陣痛が酷くなり
笑っている場合ではなくなった

でも、何回目かの息みで
ちびちゃんは‥‥‥
「おぎゃぁ、おぎゃぁ!」と。

看護師さんから
「可愛い、女の子ですよ。」
と、咲桜の胸に置いてくれた。

智は、涙をいっぱい目に溜めて
「ありがとうっ、ありがとう、咲桜っ」
と、言って、咲桜ごと
赤ちゃんを抱き締めた。

看護師さんが、
「はい。お父さんも
抱いてあげて下さい。」
と、言うと

おっかな、びっくりしながら抱き、
またまた、涙を流していた。

咲桜が可笑しくて
笑っていると
赤ちゃんが目を開けた。

みると、瞳が薄いグリーンで
またまた、智は大喜びだった。
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