【完】365日、君をずっと想うから。
「思ったより早かったじゃん」
肘に手をつき、ハァハァと乱れた呼吸をする私とは相反して、向坂くんが涼しげな笑みを浮かべていて。
もう……!
誰のせいでこんなに苦しい思いをしてると思ってるの!
……なんて、口が裂けても言えないけど。
「さ、帰るぞ」
「う、うん」
スタスタと歩き出す向坂くんの後ろを、戸惑いがちに追う。
ほんとに、一緒に帰るだけ?
じゃあなんでこんなこと命令したんだろう。
荷物持ちでもさせるのかと思ったら、そうでもなさそうだし……。
遠慮がちに、向坂くんの数歩後ろを歩いていると。
「つーか、なんだよこの距離」
突然足を止め、眉間にしわを寄せた向坂くんがこちらを振り返った。
「だ、だって」
「取って食ったりしねぇっつーの。
なんもしねーから安心しろ」
確かに、向坂くんは私に手を上げたりはしない……とは思うけど。