幼ぶるヒツジ


「この手……ちゃんと大きくなってんのか」


「……もうならないんじゃないかな。背も止まってるし」


「いや、これで成人と同じとか嘘だろ。もっとデカくなれ」


「無茶言わないでよ」


涙目のまま睨んでくる表情は破壊力抜群だ。


諦めるな、デカくなってくれないと困るんだよ。


まだ成長する余裕があるからと、そう言ってもらえないと俺がつらい。


中学校の制服を着ていたあゆなに“女”を意識したとき、俺がどれだけ悩んだか知らないだろう。


背を丸くして屈んで、やっと近づいたあゆなの頭にコツンと額を当てる。


「柊ちゃん、疲れてるの?」


「……今のお前の一言で壮絶な疲れがきた」


「ごはん食べたら?」


「………」


いくら幼馴染みでも、男と女でこの距離で!んな会話ができるお前が全く理解できねーわ!


「あのさあ。あゆなはどうして俺に帰ってきて欲しいんだ?」


「……さびしいから」


「どうして寂しくなる?」


「どうして、と言われると……」


口ごもる彼女から頭を離し、その悩める顔を見て自然に深いため息が出た。


「その理由が分かるまではそっちに帰らない」


「待って、今から考える」


「無理だって。ほら行こう、遅くなったら電車が少なくなる」


本当に考え始めたらしいあゆなの肩に、自分のパーカをのせて外へ出た。


十五歳のあゆなには、まだこの距離でいい。






歩き始めた時、気を取り直したあゆなの報告は唐突だった。


「そういえば、今日学校の先輩から告白されたよ。二秒で断ったけど」


見事な瞬殺……気の毒な相手はどこの馬の骨だ!


「なるほど。そっち方面ややこしくなる前に答え聞きに行くよ」


「え?なあに?」


「なんでもない……」






**fin**


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