初心者オコトワリ!
切れ者の彼

「山下さん、これ、お願いできませんか?」

新人の未来ちゃんから声を掛けられて振り返れば、綺麗に積み上げられた紙の束が目の前に差し出された。
私は、気づかれぬようにそっとため息を落としてから、微笑む。

「また、うまくいかなかった?」
「はい。…っていうか、私、どうも相性が悪いんですよ。この先も絶対にうまくやれる自信がないです。」

私も新人の頃は、「最近の新人は…」などと、よく先輩に愚痴をこぼされたものだけれど。
自分がその立場になってみると、痛いほど気持ちが分かる。

それくらい、自分で何とかして。

そう言いたい気持ちをぐっと抑えて私は紙の束をデスクの脇に置くように言った。

もちろん、顔は笑顔のままだ。
最近の新人は打たれ弱い。
下手に注意すれば泣かれかねない。
ただでさえアラサーのお局として若い子には敬遠されているのに、いじめられたなどと噂をされてはかなわない。

「後でやっておくわ。でも、早く“彼”を使いこなせるようにならないとね。」

にっこり笑って言えば、未来ちゃんは途端に安堵の表情を浮かべて。
「ありがとうございます」と言って、ぺこり頭を下げて席へと戻っていった。
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