大切な恋
1、高鳴る胸
やっと、お昼になった。
パソコンのキーボードから手を離す。
凝り固まった筋肉を伸ばすように
ゆっくり首を左右に傾けた。
「佳奈美、お昼は?」
同僚の麻衣子に声をかけられる。
「うん、行く。あ、でも……うん、先に行ってて。すぐに追いかけるから」
「わかった。早く来てよね?!」
麻衣子に軽く笑顔で頷いてみせる私。
「……」
視線を泳がせてから、私はこっそり彼を見つめる。
いつもスマートで……スタイリッシュな彼。
私の視線に気がついたのか、
彼がふとこちらを向いた。
「どうかしたのか?」
彼がやわらかい表情を私に向ける。
「ううん、なんでも…ただ……」
「ただ……なんだよ?」
彼に見つめられただけで
嘘みたいに心臓が高鳴る。
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