大切な恋
5、大切な思い出
落ちていく彼を見つめながら
今までの彼とのことを
走馬灯のように思い出していた。
『大事だよ』って私に向かって
言ってくれた彼の優しい笑顔が忘れられない。
私は、彼が大事だった。
彼との思い出のページが何より大切だった。
じんわりとこみ上げてくる彼への思い。
「泣かないで、佳奈美さん」
顔を上げると年下で明るくポップな彼がいた。
「僕が前カレの分も佳奈美さんを大切にする。一生」
「一生?」
「もちろん、この身が滅びるまで一生傍にいる。
一緒に大切な思い出を守ろうよ!」
以前、出会った頃に
彼も同じようなことを言っていた。
『一生守るよ、佳奈美。この体がボロボロになるまで』
前の彼を忘れるには
新しい恋が必要だろうか?
私は、床に落ちて
もう裏に付いた糊が
乾いてしまった黄色い彼を眺めた。
「今までありがとう。……さようなら」
拾い上げて
ゴミ箱にそっと彼を捨てた。
fin
★
擬人彼氏・・・・・・ふせん