大切な恋
4、突然の別れ
★
「あいつ、お前のこと好きみたいだな」
二人でいる時に彼がぽつりと言った。
「え?!そ、そんなことないよ。それに、私は……」
私は今でも彼が好き。その気持ちは出会った時と
少しも変わらない……。揺らいだりしていないはず。
年下の彼に視線を移してみる。
目が合って可愛く微笑まれた。
内心……
ドキッとしてしまったのも事実。
そんな私の表情に気がついたように
彼が微笑む。
「もう、いいんだ。佳奈美」
優しくて、それでいて哀しそうな表情だった。
「え……」
「俺のことなら気にするな。新しい男とうまくやれ」
「そんな……急に」
「俺は……もう、お前の傍にいる資格がない。それは自分が良くわかっている」
「そんなことないよ!」
私の目の前で私達の思い出から
立ち去ろうとしている彼がいた。
「待ってよ!行かないで」
少しの風でも吹いたなら
飛ばされてしまうくらいの彼。
「わるかったな、佳奈美。
お前との思い出をずっと……守って・・・・・・やれな・・・かった」
彼の最後の言葉は、
あまりにきれぎれで
良く聞き取れなかった。
ふたりの思い出が剥がれ落ちていく。
二人の出会い、大事な思い出のページから
彼はひらひらとはがれてしまった。
床に落ちていく彼の唇が「ごめん」って動いているように
私には見えた。