大切な恋
4、突然の別れ







「あいつ、お前のこと好きみたいだな」

二人でいる時に彼がぽつりと言った。


「え?!そ、そんなことないよ。それに、私は……」


私は今でも彼が好き。その気持ちは出会った時と
少しも変わらない……。揺らいだりしていないはず。


年下の彼に視線を移してみる。

目が合って可愛く微笑まれた。


内心……
ドキッとしてしまったのも事実。



そんな私の表情に気がついたように
彼が微笑む。

「もう、いいんだ。佳奈美」

優しくて、それでいて哀しそうな表情だった。


「え……」



「俺のことなら気にするな。新しい男とうまくやれ」


「そんな……急に」


「俺は……もう、お前の傍にいる資格がない。それは自分が良くわかっている」


「そんなことないよ!」


私の目の前で私達の思い出から
立ち去ろうとしている彼がいた。


「待ってよ!行かないで」

少しの風でも吹いたなら
飛ばされてしまうくらいの彼。




「わるかったな、佳奈美。
お前との思い出をずっと……守って・・・・・・やれな・・・かった」

彼の最後の言葉は、
あまりにきれぎれで
良く聞き取れなかった。






ふたりの思い出が剥がれ落ちていく。


二人の出会い、大事な思い出のページから

彼はひらひらとはがれてしまった。





床に落ちていく彼の唇が「ごめん」って動いているように
私には見えた。










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