仮氏
それでも待ってしまう私もいて。バカだなぁって思いながら空を見上げた。

「どうせ口だけって思ってたんでしょ?」

10分もしないで彼が目の前に現れた。
まさかこんなに早く来るなんて思っていなかったから驚いた。

「…お疲れさま、莉音。頑張ったね」

それだけ言って彼は本当にハグをした。
冷え切った心がちょっとずつあったかくなる。

「誰かに見られたらどうするの?」

「莉音はいつもそればっか。別に誰に見られたって構わないんだけど」

「なんでここにいるって分かったのよ」

「そこのパチ屋の音」

「何してたの、なんでこんなに早く来るの?」

「ちょうど友達とメシ食ってた」

「戻りなさいよ」

「いーの、莉音の方が大事」

「もう大丈夫だから…」

「前も言ったよね?莉音は1人で頑張れちゃうんだろうけど、頼ってよって」

「うん…」

「仕事のことは俺が代わってあげられないけど、愚痴くらいなら聞けるし」

「…」

黙ってると彼の腕に少しだけ力が入った。

「ハグだっていくらでもするし」

「するし?」

「……エロいこともしてあげる」

彼が耳元でボソっと言った。

「サイテー!!」

私が彼の腕を解いてそう言うと彼は笑った。

「元気な莉音のほうがいいよ!周りの言うことなんて気にするな。莉音は莉音でしょ?」

急にそんな事を真面目な顔をして言うもんだから調子が狂う。でも、言わなきゃと思った。

「…ありがとう。来てくれなかったらきっと凹んでた」

いつも言わないで後悔するから、素直になってみた。
< 114 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop