仮氏
なんだか彼といると、まだ純粋だった頃の自分を一からおさらいしてるようなそんな気持ちになった。

「…で、どうする?」

「どうって?」

「何かしたいとかないの?」

「何にも考えてない。…ただこのままもうバイバイするの嫌だなって思っただけで…」

そう返すとしばらく彼は黙ってしまった。

(やば、変なこと言っちゃったかな…?)

心の中はすごくオロオロしていた。

「あのさぁー」

ようやく彼は口を開いた。

「な、何…?私変なこと言った?」

「変なことは言ってない」

「じゃあ何よ」

「そういうの、反則」

「意味わかんないわ」

「あーーーっ!もう!!!」

ちょっと声が大きくなる彼。




「莉音がかわいい」





直球な彼の言葉に再び耳たぶまで熱くなる。
こんなこと、どれくらいぶりに言われたんだろう。
こういうときってなんて返せば正解なんだろう。
そんな私の顔を彼は覆い隠すように抱きしめた。

「ちょっと!何これ!」

「今の莉音の表情、誰にも見せたくないから」

「え?」

「俺以外のヤツに見せたくないの!」

「な、何か今日おかしくない?」

「俺はおかしくないよ?いつも思ってること莉音に言ってる」

そう言って彼はまっすぐな瞳で覗き込む。
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