仮氏
私はこの瞳に弱い。
視線を外すことができないくらい、彼の瞳は私を金縛りにさせるんだ。

「とりあえず、あそこ行こ」

と彼が言ったのは駅前のシティホテル。

「莉音はメシ食べてないでしょ?あそこのイタリアンおいしいし、飲めるし」

「…うん」

彼とお酒を飲むのは2回目だな、なんて思った。
彼のいう通り、ホテルのイタリアンレストランは美味しかった。

「ここ、隣の市でもともとレストランやってんだよね」

「へぇー!このお肉にかかってるもろみのソースおいしいし、カクテルもすごくおいしい」

「レストランだともっとメニューあるよ!今度行こう」

「うん」

会話の流れなのかもしれないけど、こうやって行こうって彼が言ってくれることが嬉しかった。
それを彼に気付かれないようにカクテルをゆっくり飲んだ。

「お腹いっぱいー!」

「そりゃよかった」

「あ、もうお会計したからね」

「はぁ?聞いてねーし!」

「今言ったわよ?」

「何それ、俺ちょーかっこ悪くない?」

「悪くない。いつもごちそうになってるし、今日はワガママも言っちゃったし、励ましてもらっちゃったし」

「ワガママ?どこが?」

ちょっとだけ彼は不機嫌そうだ。

「まぁいいじゃない、たまには」

「いいよ、こっからは俺のワガママ聞いてもらうから」

と言って彼は立ち上がった。
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