仮氏
結局私が動くまでずっと彼はそのままでいてくれた。
何も話さなくてもちっとも気まずくなかった。

「ごめん…。ありがと」

「全然!莉音が望むなら添い寝だってなんだってするよ?」

「…チャラっ」

「忙しくなるから連絡できないって俺言ったじゃん?」

「うん」

「きっと莉音のことだから俺から連絡しない限り絶対莉音から連絡してこないなって思ってたの。」

「だって邪魔したくないから…」

「わかってる!でも本当に連絡してこないんだもん、焦る」

「は?」

「寂しかった?」

「そんなわけないじゃん!自惚れないでよ」

「本当に?」

「本当に」

「絶対?」

「絶対っ!!」

「なんだ、つまんねーの」

本当は寂しかったけど、そんなこと言えるわけないじゃない。
それに、なんだかこんな風に言わされるのも癪に触るし。


「でも、さ」

「ん?」

「こんなに疲れる前に、俺に頼ってよ!1人で頑張れちゃうのはわかってるけど」


心がじんわりあったかくなる。
あなたからそんなふうに言われたら、泣いちゃいそうになるじゃない。
私は、ボソッとありがとうと言った。
かわいくないなって我ながら思う。
言ったすぐそばから後悔した。
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