仮氏
まだ体の関係はないにしても、普通にキスするし手も繋ぐ。
きちんと私たちの関係をカタチにしないなら、これはなんと呼べばいいのだろう。
ただの曖昧な関係。都合のいい関係。
きちんとカタチにしてと求めたら、きっと彼は遠くに行ってしまいそうだ。
それならこのままでいいじゃない、と思ってしまう私がいた。

深く考えたってしょうがない。
今がいいんだからそれでいいや。

私はそう言い聞かせてそれ以上考えるのをやめた。



「松本さん、付箋してあるとこの訂正頼んでいいかな?」

先生に言われて分厚い書類を受け取る。
訂正を無事に終えて先生のデスクに書類を置いた。
休憩もしないで一気に終わらせたので肩がバキバキだ。
ちょうどタイミング良く携帯が鳴る。


『莉音、元気?ついに産まれたよー!名前は遼(はるか)だよ!よろしくね』


親友からのメールだった。
かわいい赤ちゃんの写メも一緒に貼られていた。

『おめでとう!お疲れさま!落ち着いたらはるかくんに会わせてね(*^^*)』


私はそう返信した。
親友のことだけど自分のことのように嬉しい。


でもふと思う。
普通に誰かと結婚して、子供を産んで。
それが世間一般で言う幸せなのかな、と。

私は父しかいないから、父からは何も言われないけど叔母さんや叔父さんからは結婚、結婚とやたらと言われるようになった。
私には妹がいて、子供も2人いるし、父は孫の顔も見られてていいじゃないかと思う。
でも周りは子ども子どもと言う。

私は好きとか付き合うとか、向いてない。
あの時、無理やり駆け落ちでもすれば良かった?
泣いて、それでも一緒にいたいと縋ればよかった?

何が正解だったかなんて未だにわからない。

ただわかってるのは私は1人ぼっちだってこと。
仕事も楽しいし、充実してて何の不満もない。
だけど周りが結婚したり出産したりすると、毎回毎回こうやって何とも言えない気持ちになる。
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