仮氏
慌てて体勢を元に戻そうとすると、彼に腕を掴まれた。

「ちょっと…!」

離してよ、と言う前に唇を塞がれた。
彼に包まれた身体はそのままゴロンとベッドに沈んだ。

「…いいね、起きたら莉音がいるって」

「よく言うわ!」

「いつもその日にバイバイしてたし」

「だって、次の日仕事だし…」

一緒にいたら、余計に離れづらくなるから、と言おうとしたけどそれは口に出さなかった。

「うん」

「だいたい隼くん呼び出すの急なんだもん」

「確かに!……じゃあなんで今日は一緒にいてくれたの?」

「休み前だったし、あんなに元気ない声聞いたらそのまま置いて帰れないじゃない」

私はそう答えた。

「さんきゅ」

彼は顔をくしゃっとさせて、私をぎゅーっと抱きしめた。
そういうとこ、ズルい。
なんだか言わされた感もする。

あなたは笑ってくれてるけど、本当はどう思っているんだろう。
また胸がズキッとした。
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