史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「はい、三木不動産の佐倉です」

電話は予想もしていない相手からだった。

「はい、はい。 そうですか・・はい」


テキパキと伝えられる話の内容を私はどこか他人事のように聞き流して、通話を終えた。
受話器の向こう側の出来事は別世界のようで、現実感がなかった。


「佐倉？ どうした？ なにかトラブルか？」

霧島さんに肩を叩かれ、はっと正気に戻る。

「ごめんなさい。仕事じゃなくて、プライベートの電話でした。気になさらないでください」

「こんな時間にか？誰から？」

霧島さんが眉をひそめる。


「なんか、母が事故にあったとかで・・・病院からの電話で・・」

「は！？ どこの病院だ？？ すぐにタクシー呼ぶから早く行けっ」

「いいんです。 もう縁を切ったも同然だし、今更会っても・・・

叔父がいるので、叔父に連絡を・・」




「瑠花っ」

パチンと両頬に衝撃を感じた。
霧島さんの両手が私の顔を包み込む。

軽い痛みで目が覚めたような気がした。


「馬鹿なこと言ってるってわかってるよな？ 」

「・・・はい」


「急ぐぞ」

霧島さんに力強く手を引かれて、私は走り出した。
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