七色の空
チャプター87
「ジーンリング」
花柄の鞄に入っているもの。鞄は福生の足元に置かれ、少しくちの開いた隙間から、林檎が福生と描いた脚本の完成稿が見える。二人の約束は、その脚本に書かれている。
映画のタイトルは、
『ジーンリング』
直訳するとジーンズの指輪である。福生にとってそのタイトルにはどんな意味があるのか。物語を一言で集約するタイトルに、福生は実を言えば、それほどこだわっていない。林檎と脚本の訂正稿を書いてる内に最初のタイトルから変更させたくらいだ。『ジーンリング』は林檎が名付けたタイトルである。福生は林檎に指輪を買ってやるような金の余裕はなかったから、林檎が物語のヒロインにジーンズの指輪をつけさせた。物語のヒロインに林檎自身を投影させたのだ。それは、付き合い始めの頃、二人お揃いで買ったラブリングとは全く次元の違う愛の証しだった。
福生が受賞した際の脚本のタイトルは『はッぴぃエンド』であった。その物語はお世辞にもハッピーエンドと言える内容のものではなかった。が、林檎と共同執筆してゆく内、魔法にかけられたかのようにタイトルを変え、醜さを失い、前向きな力を帯て、優しさに包まれながら福生のこだわりを解かしていった。
人生を変えてしまう程の出会いがある。自分の弱さを包み込む強大な優しさがある。福生はこれまで、それをワザとよけてきた。しかし、不意にぶつかったのだ。交通事故に遭う可能性より遥かに低い可能性にも関わらず、福生はそれにぶつかった。
「ジーンリング」
花柄の鞄に入っているもの。鞄は福生の足元に置かれ、少しくちの開いた隙間から、林檎が福生と描いた脚本の完成稿が見える。二人の約束は、その脚本に書かれている。
映画のタイトルは、
『ジーンリング』
直訳するとジーンズの指輪である。福生にとってそのタイトルにはどんな意味があるのか。物語を一言で集約するタイトルに、福生は実を言えば、それほどこだわっていない。林檎と脚本の訂正稿を書いてる内に最初のタイトルから変更させたくらいだ。『ジーンリング』は林檎が名付けたタイトルである。福生は林檎に指輪を買ってやるような金の余裕はなかったから、林檎が物語のヒロインにジーンズの指輪をつけさせた。物語のヒロインに林檎自身を投影させたのだ。それは、付き合い始めの頃、二人お揃いで買ったラブリングとは全く次元の違う愛の証しだった。
福生が受賞した際の脚本のタイトルは『はッぴぃエンド』であった。その物語はお世辞にもハッピーエンドと言える内容のものではなかった。が、林檎と共同執筆してゆく内、魔法にかけられたかのようにタイトルを変え、醜さを失い、前向きな力を帯て、優しさに包まれながら福生のこだわりを解かしていった。
人生を変えてしまう程の出会いがある。自分の弱さを包み込む強大な優しさがある。福生はこれまで、それをワザとよけてきた。しかし、不意にぶつかったのだ。交通事故に遭う可能性より遥かに低い可能性にも関わらず、福生はそれにぶつかった。