七色の空
チャプター56「夏の出来事」

林檎が三十路近いということは、長生きな祖父母などは、そろそろお迎えの時期が迫っているということである。
林檎が福生を探している最中、母親からメールが届いた。母方の祖父がなくなったことを知らせるメールだった。林檎は返事を返す余裕などなかった。今は一刻も早く福生を探さなければならない。ドクターの推測では、福生の容態から考えて、それ程遠くには行っていないだろうということだ。
林檎は、福生が今、何を考えているのか、想像がつかない。心当たりなどをナース達から聞かれても、何も浮かんではこなかった。
歩くことすらままならない状態で、福生はいったい何処へいったのか?何の為に?…林檎は福生の気持ちになって考えてみる。もし、自分が福生なら、こんな時に向かう先は、映画か愛だ。映画なら編集している撮影所。しかし、病院より既に関係施設への問い合わせは済み、福生がいないことを確認していた。
 なら、愛だ。自分に会うために福生が病院を抜け出したなら、ここにいることは最悪だ。
2日前にハンドルネーム「深夜の願い」からブログにアクセスがあったということは、福生は携帯を持っている。そぉ思った林檎は福生に電話をかける。しかし、福生の携帯は料金未納でサービス停止になっている。林檎は近くのDoCoMoショップで福生の携帯料金を支払い開通させようとするが、契約者本人でないことで断られてしまう。閉店間際のDoCoMoショップが騒がしくなる。
林檎「払うっていってんだからお願いします。人の命に関わることなんです。あなたが判断できないなら責任者だして!」 清楚な受付のお姉さんにとってはいい迷惑だ。しかし、今の林檎にドコモの業務規定は通用しない。
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