七色の空
今の林檎は、福生に出会った時の精神状態に似ている。正確に言えば、川に身を投げる前の精神状態。あの時、川に身を投げようとしたのはどうしてか?福生に出会って、楽勝で吹っ飛んだあの時の気持ちが、曖昧な姿でオーバーラップしてくる。
福生の捜索願いが出された後も、林檎は独り探し続ける。林檎が探していたのは、福生ではなく、福生の気持ちだ。気持ちを理解できれば姿を確認できなくても構わないとさえ感じていた。
あてのない林檎は夜遅くまで街を徘廻する。探しているのは福生の気持ちだ。歩いても歩いても解らない。結局気が付けば吉祥寺から明大前まで移動していた。林檎は明大前駅で電車に乗る為、切符を買おうとするが、何処まで切符を買えばよいのか分からない。今から何処へ行けばいいのか?
林檎「!?」
林檎はすっかり忘れていた。福生が向かった先が愛である可能性を。自分に会う為に病院を抜け出したのなら、ウチに向かうはずだ。面会に向かった自分と行き違いになっている。間違いないと、直感が根拠のない自信へ急速に変化してゆく。
もし、ウチで福生が待っていれば、林檎の疑問は不安と共に吹き飛んでしまうのだろう。
 林檎は、明大前から自宅に向かって走り出す。今日一日で一年ぶんの運動をすることになった林檎は、2日後、筋肉痛に苦しめられる。筋肉痛が少し遅れてやってくる、林檎はもぉそうゆう歳だ。首から下が、首から上を裏切り始める歳。
 林檎はどうして、その夏あんなにキラキラしていたのだろう…。
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