幼馴染みの期限

「どうした、樹里?お前、今日は静かだな。……分かった、人数増えて食べる量が減ったからむくれてんだろ。軟骨頼んでやるから機嫌直せよ」


黙りこんでしまった私に広海が検討違いの余計な心配をしてきた。言い返してやりたいけど、また陽菜ちゃんに仲裁をされてしまうと思ったら声が出てこなかった。


「何だ?それとも焼き鳥か?手羽ギョーザか?ほんと、食い意地のはったヤツだな」


言い返さない私に、さらに広海がバカにしたように話しかけてくる。


いつもはそんな言い方をされても別に気にならないのに、今日はなんだか泣きたくなるほど気分が滅入ってしまった。


「……帰る」


何にも分かってない広海の言葉をこれ以上聞きたくなくて、気がついたらそう言って席を立っていた。


「は?どうしたんだよ急に」


「宏美さんすみません、先に帰ります。……みんなもごめんね。ちょっと酔っちゃったみたい。私の分、これで払っといて」


広海の言葉を無視してテーブルにお金を置いて急いで立ち上がった。宏美さんを空気にしてしまうのは申し訳ないけど、今はどうしてもここに居たくない。


「大丈夫ですかぁ?街コンは飲み過ぎちゃダメですよ。私、応援してますから。お疲れ様でーす」


陽菜ちゃんの言葉も今は素直に受け取れない。


気が利かなくて、後輩に気を遣わせて、自分の思う通りに話せないからってもやもやして……


そんな私の気持ちを分かってくれない広海にもイライラしちゃって帰ろうとするなんて、まるで子どもだ。


何か言いかけた広海のほうを見ないふりをして、私は逃げるようにその場を後にした。

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