幼馴染みの期限

「まぁまぁ樹里さん、飲み物も来たことですし、乾杯しましょうよ」


反論しかけた所で、ね?と陽菜ちゃんにやんわり仲裁されて怒りの行き場が無くなってしまった。


今の流れだって別に本気で喧嘩をしてる訳じゃないのに……とちょっとだけ不満に感じてしまう。


広海とこうしてあーだこーだ言い合ってる時間も飲み会の楽しみのひとつなんだけどな……


まぁ、広海に向かってぶつぶつ文句を言ったり、噛みついた所で淡々と流されてしまうだけなんだけど。


でも、そんなこんなで流されている内に怒ってる事がバカバカしくなって、いつも最後は楽しい気持ちになれるんだよね。


優しい陽菜ちゃんにはこうして私が広海と話していると、私が一方的に広海に喧嘩を売っているように見えてしまうらしく、いつもやんわりと止められてしまう。


陽菜ちゃんは広海の事が好きだから、好きな人を守りたい気持ちも分からなくはないんだけど……


しゅんとしていると、才加が「ほら、食べなさい」と大皿から取り分けた料理を渡してくれた。


いつもなら美味しそうなご飯を見ると機嫌も直ってしまうのだけど、今は料理を取り分ける事すら全く思い付かなかった気の効かない自分にさらにガックリしてしまった。


よく見ると着いたばかりの陽菜ちゃんも運ばれてきた料理を取り分けたり、宏美さんが空けたグラスを片付けたりとかいがいしく働いていた。


宏美さんのグラス……私はよく飲むなぁ、ぐらいにしか思ってなかった。寄せるとか片付けるとか思いつきもしませんでした。
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