幼馴染みの期限
「だ、だっ……大丈夫ですぅっ」


思わずその手から逃げるようにのけ反ってしまった私を見て、広海は「何で敬語なんだよ……」と呟いた。


その右眉は下がり気味で、今にも唇を引き結びそうな様子を見て、今度は全身の血の気がさあっと引いて、背筋を冷たいものが走り抜けた。


……どうしよう。怒らせちゃった。


心配してくれたのに逃げちゃうなんて、さすがに感じ悪かったかな。


……じゃあ、"恋人"って、"彼女"って、こういう時にどうするのが正解なの?


嫌われたくないって思えば思うほど、身体は固まって、言葉が出て来なくなってしまう。



「なぁ、樹里。……俺、やっぱりお前の事悩ませてるのか?」



「……へ?」


焦って泣きそうなくらいに落ち込んでいる所に予想外の言葉が飛び込んで来て、思わず間の抜けた声が出た。


ポカンとした私を見ながら、広海は "はぁ" とため息をついている。


その憂いのある表情だって、そこだけ切り取って額に入れて飾っておきたいほど美しい。


……って、違う違う。切り取ってどうする。


でも、広海が私の事を、"やっぱり" "悩ませてる" って……一体何の話だろう?



黙ったままの私に何を思ったのか、広海がばつの悪そうな表情を見せながら言った。

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