幼馴染みの期限
「なんで?」
「……顔上げんな」
「どうして?」
「……今は、ダメだ」
何でダメなんだろう?私はただ、広海が酔っ払いに呆れていないか、確かめたいだけなのに。
23時過ぎ。夜遅くとはいえ、近所の道端で、ひょっとしたら誰か知り合いが通るかもしれない所で抱き合いながら、ポソポソと小声で会話をしている私達。
酔った勢いもフリも限界で、さすがに恥ずかしくなってきた。
「ちょっとだけ見るのも……ダメ?」
「……ダメだ。ほら、もう行くぞ」
最後にダメ押しのようにキュッと頭を下に押されて、抱き締められた腕がほどかれた。
「……聞いてるこっちが恥ずかしくなるんだよ」
身体が離れた瞬間に呟かれた言葉は、聞こえるかどうかの小声だったから、私に聞かせるつもりは無かったのかもしれない。
でも、その言葉が聞こえなかったとしても、表情を見せないように顔を逸らしてさっさと歩き出したその後ろ姿を追いかけて顔を見上げたら、たぶん今の私と同じように真っ赤な顔をしているんだろうな……って何となく分かってしまった。
ふふっ、と笑いがこみ上げる。
今はたぶん、私達は、恋人同士と言うよりは "幼馴染み時々恋人" くらいの距離だ。だけど、今の私にはこれくらいがちょうど良くて、心地いい。

