幼馴染みの期限

***

土曜日。

デートの誘いを受けることにした(なってしまった……)私は羽浦駅前に来ていた。


昨日は緊張してよく眠れなかった。


待ち合わせよりも20分も早くコンビニに着いてしまった私は、暇をもて余していた。


雑誌を手にとってぼんやりと眺める。


……こんなの、何だか張り切ってるみたいで恥ずかしい。


「あれ?樹里ちゃんじゃないかい?」


聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、ポンと肩を叩かれた。


「あ……源さん」


振り返ると、源さんが立っていた。


「なんだなんだ可愛い格好して。今日はデートかい?」


確かに……迷った割には下ろし立ての、フェイクファーが可愛いネイビーのダッフルコートを着ちゃってる。


グレーのニットとこれまた買ったばかりのオフホワイトのミニスカートを合わせてみた。


普段は手櫛で整えるだけのショートボブの前髪まで編み込んじゃったりして……どっからどう見ても気合い十分な格好だ。


普段の私を知っている源さんにあっさりデートだと見破られて、恥ずかしさが込み上げてきた。


頬が熱くなっていくのを感じながら「はぁ……そんな感じです」と返事をした。


「んー?初々しいのはいいけど、いつもの元気がないねぇ。もっとデートって言ったら、ウキウキでルンルンなもんじゃないのかい?」


そのまま源さんはレジに行きコーヒーを注文すると「待ち合わせまで時間があるなら、一杯つき合ってくれや」と私の分も奢ってくれた。


店員さんが「どうぞ」とコーヒーマシーンの前に椅子を持ってくる。「お客様は?」と聞かれたので、慌てて断った。


そのままどっかりとパイプ椅子に腰かけて美味しそうにコーヒーを飲む源さん。

おかしな光景だけど、源さんだと似合ってしまうのが何だか不思議だ。
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