不器用な彼が隠した2文字
帰り道。
「…あ、」
昇降口から出ると少し前に、大好きな朝比奈先輩の後ろ姿を見つけた。
いつもだったら、それだけでラッキーで。
声をかけて、強引にでも一緒に帰るけど。
…でも、今日は無理だなぁ。
彼女がいるかもしれない。
そう思った瞬間に私の勇気はどんどん小さくなって、出かけた言葉を飲み込んでしまう。
だけど、ゆるいパーマで毛先を遊ばせたの黒髪も。
細いくせに筋肉質な背中も。
肩にかけたバッグの持ち方も、風が吹いた瞬間に揺れる髪も全部。
全部、好きだって。
私のものになればいいのにって思ってしまうんだ。