不器用な彼が隠した2文字




…やっぱり、声をかけたい。


彼女がいるとかいないとか、よく分からないけど。

でも、私と朝比奈先輩が2人で過ごした時間だって本物なんだ。




前よりはずっと、私に心を開いてくれた朝比奈先輩。

そのわずかなチャンスをここで、手放したくはないから。




そう思って足を踏み出した瞬間ーー…。










「…理生くん!」







鼻にかかった、可愛い声。


『理生くん』




彼が絶対に人に呼ばせないその名前は、初夏の蒸し暑い風に乗って私の耳まで届いた。






< 119 / 341 >

この作品をシェア

pagetop