不器用な彼が隠した2文字
どうして、って。
「別に、織花さんのためじゃないです。
朝比奈先輩のためです」
「え?」
「あの日、熱が出たっていう織花さんのところに走って行く朝比奈先輩を見て、
朝比奈先輩にとっても織花さんが、
すごく大切な人なんだなって思いました」
だから、そんなこと言ったところで。
朝比奈先輩はきっと、自分に責任を感じてしまうから。
自分が織花さんを追い詰めたって、思ってしまうだろうから。
「朝比奈先輩に言ったところで、
朝比奈先輩は喜ばないから」
だから、言わなかった。
それだけです。
私は、ライバルのことまで気を使えるような優しい人じゃない。