不器用な彼が隠した2文字




朝比奈先輩は3年生だから、3階の教室に向かう。

そして私は2階。



別れたあとも振向いてくれないその背中を、見送ってから教室に入った。






「どうしたの、顔にやけてるよ」




怖いんだけど、と冷たい視線を向けるのは、中学の頃からの友達の紫乃。

クールだけど優しい女の子なんだ。




「実は……!」




朝から先輩に会えたの!

と叫ぼうとした瞬間。




「朝比奈先輩に会ったの?」



なんて言葉を先取りする紫乃。


「……今、私が言おうと思ったのに」


「分かりやすいのよ、有紗は」



呆れたような紫乃。

うん、私がすぐになんでも顔に出るタイプなのは、自分でも知ってるけどさ…。



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