フテキな片想い


「……キスしてくれたら、起きてやる」


「何?その、上から目線」


美雨は怪訝な顔をしつつも、「仕方ないなぁ」とギュッと目を瞑り、照れながら、俺の頬にチュッと軽く触れた。


「そこじゃねぇよ。普通、口にするだろ?」


「えぇっ、だって、寝起きの口の中って雑菌だらけだって、歯医者さんが言ってたから、嫌だ」


「人をバイキン扱いかよ?」


「そう言う意味じゃなくて。あぁ、もぅ、いつもしてるんだから、今朝くらいしなくてもいいじゃん!生意気!五ヵ月年下のくせに、生意気!」


「はい、出たー。無意味な姉気取りー」


ぬくい布団の中で、美雨を抱きしめると、文句を言いつつもキャッキャッしながら、嬉しそうにしている。


最近は、毎朝のこのたまらなく無駄な喧嘩が、楽しくてしかたない。


コンコンと部屋の扉がノックされ、「美雨ちゃん、真央、起きた?」とお兄の惚けた声が聞こえてきた。


俺は慌てて美雨から離れ、美雨もお兄の声が聞こえた瞬間に、がばっと起き上り、乱れた髪を整えながら、よそよそしく、ベッドの淵に腰掛けた。


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