閉じたまぶたの裏側で
不毛な関係


彼のジャケットのポケットの中でスマホがくぐもった音をたて、着信を知らせた。

その音は、気付かないふりをするには大きすぎる。

まるで存在をアピールしているみたい。

私はベッドの上でため息をついた。

「電話…鳴ってるよ。」

「どうせあいつだろ。」

彼は私の肌に唇を這わせながら、それを無視しようとしている。

「ん…でも…。」

「ほっときゃそのうち切れる。それより芙佳、こっち…。」

彼は片手で私の腰を引き寄せ、太ももの間に指先を忍び込ませて、塞いだ唇の内側で舌を絡めた。

「んっ…ふ…。」

鳴り続ける電話に知らんふりを決め込んで、彼は私の体を貪る。

しばらくすると電話の音は途切れ、私と彼の荒い息遣いと湿った音だけが、薄暗い部屋に響いた。

これでやっと集中できる。

私の奥を探る彼の指の動きが激しくなり、その快感に身を委ねようと目を閉じた時、それを嘲笑うように、再びスマホは着信音を鳴らしてその場を白けさせた。

「……電話、鳴ってる。」

「仕方ないな…。」

彼はめんどくさそうにベッドから降りて、ジャケットのポケットからスマホを取り出した。

「はぁ…。」

画面に映る発信者の名前を見た彼は、小さなため息をついてから私に背を向けて電話に出た。

「ハイ…ああ、ごめんな。……え?そうか、わかった。…うん…うん…。いや、大丈夫だ…ああ。」



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