閉じたまぶたの裏側で
──またか…。

なんとなくそうじゃないかとは思ってたけど。

私は静かに起き上がって、脱ぎ捨てられた下着と洋服を拾い集めた。

電話を切って振り返った彼は、スマホをテーブルの上に置いて私にすり寄った。

「芙佳…。」

彼は甘えた声で名前を呼んで、私の体を抱き寄せる。

私の機嫌を取っているつもりなのか、頬や耳にキスをする彼に私は無性に苛立った。

「帰るんでしょ?」

「……こんな中途半端なのに?」

「もうそんな気分じゃなくなったの。続きは帰って奥さんとすればいいでしょ。」

「拗ねてるのか?」

「別に…いつもの事だし。それより早く服着て帰れば?」

彼の服をその手に押し付けた。

彼は少しバツの悪そうな顔をして、私の唇にキスをする。

「ごめんな、なんかあいつの親父が来るとか言ってるし帰るわ。また近いうちに埋め合わせするから。」

…もう聞き飽きたって。

ホントはそんな事、これっぽっちも思ってないくせに。

「あなたが出てくれないと鍵閉められない。私はお風呂に入りたいの。早く出てって。」




なかなか服を着ようとしない彼を急かして追い出し、わざと大きな音をたてて鍵を閉めた。

冷たいコンクリートの廊下を歩いて奥さんの元に帰って行く彼の足音が、ドア越しに聞こえた。


なんてバカらしい不毛な関係。


私も彼も、一体いつまでこんな事を続けるつもりなんだろう。











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