閉じたまぶたの裏側で
「もうただの友達のふりはやめだ。これからは遠慮なくガンガン行くから覚悟してろ。」

「うーん…。会社ではわきまえてよ。」

「大丈夫だ。なんかあったら俺が責任持って芙佳を嫁にもらうから。」

かなりグイグイ来るな…。

ちょっと心配だけど、それも不思議とイヤな気はしない。

「とりあえず明日デートしよう。まずはそこからだ。」

「デートって…。」

「焦ってがっついて芙佳に嫌われたくないからな。ちゃんと手順踏んでく事にする。」

いやいや、既にかなり手順バラバラだと思うんだけどな。

付き合ってもないのにいきなりプロポーズされてるし、食っちゃおうとするし、その後に、デートの申し込みって…。

それでも應汰なりに、私の気持ちを考えてくれてるのかな?

「俺の事、ちゃんと知りもしないうちに断るなよ。」

なかなか返事をしない私を後ろからギュッと抱きしめて、應汰は耳元でボソッと切なげに呟いた。

「…わかった、受けてたつ。」

「絶対惚れさせてみせるからな。」

「のぞむところだ。」

「言ったな、こいつ。」

應汰は軽口を叩きながら、じゃれるように私を抱きしめた。


應汰が真剣に私を想ってくれているのなら、私も真剣に考えよう。

いくら好きでも先のない勲との不毛な関係を断ち切るのは、私しかいない。

私だけを一生愛してくれると言った應汰の気持ちに応えられるのも、私しかいない。



私にだって幸せを求める権利くらいはあるはずだ。






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