閉じたまぶたの裏側で
夜になり、ビールを飲みながら簡単な夕食を済ませた。

明日は何を着ていこうか。

どこに行って何をする予定なのかもわからないから、ちょっとくらいは動ける程度の無難な服を選んだ方が良さそうだ。


明日着ていく服を選ぼうかと立ち上がった時、チャイムが鳴った。

こんな時間に誰?

時計の針は9時を少し回った所を指している。

もしかして…。

ドアモニターを確認すると、案の定勲が立っていた。

どうしようかな。

このまま出るのをよそうかと思ったけれど、苛立ったように短い間隔でチャイムは何度も鳴り続ける。

仕方なくそっとドアを開けると、勲はその隙間をこじ開けるようにして、強引に体をねじ込んだ。

どこかで飲んで来たのか、少し酔っているようだ。

「芙佳。」

「土曜日の夜に突然なんの用?」

目一杯のイヤミを言ってやると、勲は拳をグッと握りしめた。

「夕べは帰って来なかったのか?」

「それがどうかした?」

「あの男と一緒だったんだろ?」

やっぱり見られてたか。

「私が誰とどこで何をしようが、あなたには関係ないでしょ?」

突き放すように冷たく答えると、勲はもどかしそうに靴を脱ぎ、私の体をグイグイと押して部屋の奥へと追い込んだ。

「関係なくなんかない。」

勲は痛いほど強く私を抱きしめた。

「俺は芙佳が好きだって言ってるだろ。」

「……もうよしてよ。聞きたくない。」

腕の中から逃れようと身をよじっても、勲の腕は強い力で私を捕らえて離さない。




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