閉じたまぶたの裏側で
七海との結婚の経緯をすべて話し終えると、勲は私の手を握った。

「七海とは離婚する。俺が好きなのは芙佳だけだ。芙佳と一緒に居られるなら俺は…。」

「もうやめよう…。」

無意識のうちにその言葉がこぼれ落ちた。

「芙佳…。」

「今更そんな事してなんになるの?勲の両親はどうなるの?勲だって七海と離婚なんかしたら会社にはいられなくなるんだよ。」

「それでもいい。俺は芙佳と一緒にいたい。」

「私はもう…あなたに振り回されるのはイヤなの。今まで散々苦しんだ…。その上あなたの両親を不幸にしてまで、あなたといたいとは思えない。」

握られた手から、大好きだった勲の手をそっとほどいた。

「もう…勲と一緒にはいられない…。」

「芙佳は俺の事…もう好きでもなんでもないのか?」

「私だって幸せになりたいの…。私だけを愛してくれる人と…まっすぐに私のところに帰ってきてくれる人と、一緒になりたいの…。」

「だから俺は…。」

「あなたが私を好きだと思ってくれるなら…私の幸せを願ってくれるなら…もう二度と来ないで。」

「芙佳…。」

「さよなら。奥さんの元へ帰って。」







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