閉じたまぶたの裏側で
「ああもう!!そう思おうとしたけど無理だったから別れたんだろ!結局俺は芙佳の事が忘れられなかったんだよ、悪いか!!」

「……え?」

突然何を言い出すのか。

しかも逆ギレだ。

「あの夜、芙佳が先に眠って…俺は芙佳の頭撫でながら寝顔見てた。」

「う…うん…。」

急にあの夜の事を言われ、無性に恥ずかしくなって目をそらした。

「やっと芙佳を自分のものにできたと思ったのに…少しは俺の事、好きになってくれたと思ったのに…芙佳が泣きながら“勲、行かないで”って…。やっぱり俺はあの人の身代わりでしかないんだって悔しくて…。」

そんな事を言ったなんて。

いくらなんでもひどすぎる。

「ごめん…。」

「もう芙佳の顔見てるのもつらくて、黙って帰った。それでも芙佳は何も言ってこないし…。会社で会っても気付かないふりするし…。」

「うん…。」

「もう芙佳の事は忘れようって、他の女と付き合って…。それでも芙佳はなんにも言わないんだもんな。なんにも言わずに目の前素通りするし…。俺の事なんかどうでも良かったんだなって、かなりヘコんだ。」

應汰、言ってる事むちゃくちゃだ…。

それは私に嫉妬して欲しかったとか、他の子と一緒にいる事を責めて欲しかったとか、そういう事?




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