おいしい時間 しあわせのカタチ


「いらっしゃい佳織さん、待ってました」

「急ぎました」


 ふたりは声を揃えて笑う。


「わたしの見立てではもう三十分早く帰れるはずだったんですけど、急な在庫チェックに駆り出されちゃって」

「在庫?」

「はい。会社が休みの明日に届けてくれって言われて。ありがたいことなんですけどねぇ、もっと余裕を持って言って欲しいですよ。――ところであの、昨日のやつなんですけどぉ」


 と佳織さんはおしぼりで手を拭きながら、待ちきれません、とばかりの視線を注いでくる。

 佐希子は、思わず噴出しそうになるのを堪えながら、ただいま、と家のほうに向かった。

 スープの上のチーズが焼けて、香ばしい匂いが漂ってくるのを待ってから、佐和子はぐつぐつに煮えたぎるスープを佳織さんの前に置いた。


「わー、近くで嗅ぐとまたすごい匂い! いただきますっ」


 とろとろに煮込まれた玉ねぎを掬って一口。
 
 恍惚とした表情で佳織は口のなかの幸福を噛みしめると、惜しむように、けれどとにかく熱いので舌が焼けないよう気を配りながら、時間をかけてスープを堪能した。

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